「無償の修正依頼」は法令違反?IT・クリエイティブ制作で注意すべき『不当なやり直し』の境界線

【はじめに】

「クライアントからの修正依頼が多くて、結局赤字になってしまった」 「仕様変更があったのに、追加費用を請求させてもらえない」

IT開発やデザイン制作の現場で繰り返されてきたこの光景。実は、2026年1月より施行された「取適法(中小企業受託適正化法)」において、明確な違法行為として厳しく制限されることになりました。

発注者側の「軽い気持ちの修正依頼」が、企業の存続を揺るがす行政処分を招く時代が来ています。

1. 取適法が禁止する「不当な給付内容の変更」

これまでの下請法でも「やり直し」は制限されていましたが、取適法ではさらに踏み込み、受託者に責任がないにもかかわらず、発注者の都合でやり直しを命じることを「不当な給付内容の変更」として禁止しています。

  • NG例: 納品直前になって「やっぱり全体のデザインコンセプトを変えてほしい」と無償で命じる。
  • NG例: 当初の仕様書にない機能追加を「ついでにやっておいて」と無償で強いる。

2. 「やり直し」を命じて良いのはどんな時?

もちろん、すべての修正依頼が禁止されるわけではありません。ポイントは「受託者(制作側)に非があるか」、そして「追加費用を支払うか」の2点です。

  1. 受託側のミス(バグや誤植): これは無償での修正を命じることが可能です。
  2. 発注側の都合(仕様変更): この場合は、「追加費用の支払い」と「納期の延長」について協議し、合意する必要があります。

「契約の範囲内だと思っていた」という発注側の主観的な判断は、行政調査では通用しません。

3. IT・デザイン企業が今すぐ実施すべき「書面」の対策

トラブルを防ぎ、法違反を回避するためには、以下の実務が不可欠です。

  • 検収基準の明確化: 「何をもって完成とするか」を事前に書面で合意する。このとき、無償での修正に該当するパターンを示しておくとよい。
  • 修正回数の明記: 基本料金に含まれる修正回数を超えた場合の追加料金を契約に盛り込む。
  • 変更履歴の保存: メールのやり取りだけでなく、仕様変更の合意書(変更3条書面)を都度発行する。仕様書などによる修正内容の明確化はトラブルを未然に防ぐので添付書類として用意するのが得策。

「このプロジェクトの進め方、法的にマズいかも…?」と思ったら IT・クリエイティブ特有の「曖昧な発注」や「エンドレスな修正」が、取適法のリスクに触れていないか確認しましょう。

当事務所の「16項目の取適法リスク診断ツール」では、制作現場で起こりやすいトラブル項目も網羅しています。


【結び】

クリエイティブな仕事には信頼関係が不可欠ですが、その土台は「適正な契約」です。行政書士として、クリエイターを守り、発注者がリスクを負わないための「クリーンな制作体制」の構築を支援いたします。なお、フリーランス新法との関連性については次の記事を参考にしてください。

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